桃太郎さんーーかつての仲間を探して②

シュリケン シュリケン シュルシュルシュ

と、声を発した猿が杯をかかげ

シュリケン シュリケン シュルシュルシュ

桃太郎が真似して言い、犬もそれに続く。

「乾杯」

しゃがれた猿の声に桃太郎と犬は、猿の盃にカチンとぶつけ酒を枯らす。

「猿のおっさんよぉ、見ない間にずいぶん変わった飲み方するようになったなぁ」

シュリケン シュリケン シュルシュルシュ

再度、猿の言葉に三者三様、押し込むように杯を乾かした。

「久々の友たちとの再会だ。飲まないわけにはいかない」

「毎日ここで飲んでると聞いてやってきたが、今日は特別ということかい?」

シュリケン シュリケン シュルシュルシュ

シュリケン シュリケン シュルシュルシュ

猿はにやりと笑った。

「さあ、今日は朝まで飲もうじゃないか」

「ははっ、いいね」

お酒を運ぶ雌猿が杯がなくなるのを見るたびに酒を注ぐ。

「お姉さん、お姉さん!」

犬は酔いが回り顔が赤くなり、しっぽをフリフリ回し体を雌猿にこすりつけていた。

犬屋敷では雌犬をとっかえひっかえ相手をを変えて楽しんでいただけあると桃太郎は思った。

メス猿たちは「やめてください」と言って顔をしかめていた。

犬屋敷で雌犬や町奉行たちにやられた体中の禿げが痛々しい。

「お猿はん?いつもの入れてくださります?」

「ああ」

その掛け声とともに、黒い服を着た雄猿たちがカーテンを開け、中からグラスのタワーが出てきた。

「「「シュリケン シュリケン シュルシュルシュ」」」」

黒服たちの掛け声、拍手とともに掛け声でタワーの上から酒が注がれ、次々としたの段へこぼれうつる。

下の段まで注ぎ終わり会場からはほかの客も交えて拍手が沸いた。

猿はタワーの一番上のグラスを手に持ち高々と掲げた。

「今日はわしのおごりだ。皆飲むがいい!!」

「うおぉーー!」

拍手に加え、歓声もあがる。

店内のお客や店員、全員が上から順にグラスを手に持ち全員に行き渡ったところで猿のように高々とグラスを持ち上げた。

シュリケン シュリケン シュルシュルシュ

全員がグラスを乾かし、拍手喝さいであった。

タワーのグラスはとても多く全員が朝まで飲み明かすのに十分なくらいだった。

「猿のおっさんはやっぱりすげぇや」

きっと、俺らみたいに困っていないから儲け話には乗らないだろうと桃太郎は思った。

桃太郎はすっかり寝てしまった犬を担ぎ店の外へ出ようと動いた。

「おい、これはどういうことだよ」

「だからもう、金なんてねぇんだ!!!」

猿と黒服数人が出入口で揉めていた。

「売掛金100両、払ってもらわないと困りますよ。猿さん」

奥からとても大柄のゴリラが出てきた。

屈強なその見た目に猿は一瞬ひるんだが威勢よく抵抗していた。

「無いものはねぇんだよ!」

猿はゴリラに首根っこを掴まれ、店の外へ放り出された。

「借金返すまで出禁」

ゴリラは次に桃太郎を見た。桃太郎は即座に外へ出た。

店のドアはばたんと強く閉められ再度開くことはなかった。

「猿のおっさん、俺についてくるか?」

「ああ」

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