鶴の推し活①

私は鶴。

数百年前に人間に恩を受け、神様に恩を返す力と永遠を命を手に入れた。

その力はとても強く受けた恩は必ず返さなければならない呪いと化し、私自身を苦しめることになった。

時を経て、私は段々と自宅に引きこもる様になる。

「今日の動画のタイトルは『鶴のモーニングルーティーン』っとハイ、投稿!」

私は大きいひとりごつを放ち、背伸びをして長い髪の毛を手でほぐした。

昨日のライブ配信から続けて動画を作成していたので、今日はのんびり休もうと思った。

スマートフォンが鳴る。出前のアプリだ。お昼ご飯が届いたようだ。

私はのぞき穴から人がいないか細心の注意を払い即座に食事を回収した。

今日は焼肉定食にした。モーニングルーティーンの丁寧な朝食?そんな無駄なことはしないわ。

動画をほぼ毎日投稿している私にとって、動画に関係ないことは徹底的に排除して効率化している。

再生数はすでに10万を超えていた。にやけが止まらない。

「はぁ、現代は本当に楽だのう」

私はほおばりながらつぶやいた。

数十年前まではコンビニやコールセンター、服飾デザイナーなど様々な仕事に就いていたが同僚・お客から受けた恩は返さなければならない縛りに疲れ職を転々としていた。

ある日、光金という人の活動を見てこれなら私もできるかもと一念発起しYouTuberに転身したところ瞬く間に登録者数100万人を超えるインフルエンサーになっていた。

リスナーさんが視聴や投げ銭をしてくれることに対して、動画投稿して恩を返す。

なんと鶴向きな職業だろうと感動したものだ。

そしてインターネットでなんでもできる時代の到来。

置き配ができるのも素晴らしい。

時代がついに私に追いついたと思った。

私はストックしてあるお菓子をテーブルに並べた。

冷蔵庫から炭酸水を取り出し、ポッカレモンを注いだ。

今日は少し楽しみにしていたことがある。

「永遠」というグループがやっているオーディション番組だ。

元々そんなに星の未来劇所属のアイドルたちには興味はなかったけど、子供の頃からその事務所に所属している人たちの中からメンバーを組む体制から一新してオーディションをするということに非常に興味が沸いた。

昨日リスナーさん達から教えてもらったのだ。すでに番組は終わって半年以上たっていたのでかなり遅いけど、できればSNSを調べないで見てほしいそう。

だとしたら今日、一気に見るしかないと思った。

最初の3話までみて、このままグダグダした状態で最後まで行くのかな?

と、動画の素材を整理しながら見ようかなと思ったとき、合宿の回の2日目に目を見張る人が出てきた。

「この人…ダンスうまい。なにこのぬるっとした動き…!?」

私は一気にそこから視線が釘付けになった。

「紫の雨」という曲を6名の候補生で仕上げるのだけど、初日のゆるっとしただるだるな雰囲気から一変していた。

一人が加わるだけでこんなにチームが引き締まるのか…!!

袖無しの君…素晴らしい。

でも何か既視感があるなと思ったら少し前に見ていた「一兆円の遊び」というドラマに出ていたゲーム制作会社の社長じゃないの。

あの当時はこの人、「星の未来劇」の会社の人なのかふーんとしか思っていなかった自分が恥ずかしいぞ。

腕から見える筋肉も素敵。

この衝撃は新選組の土方歳三様以来の衝撃じゃ…!

星の未来劇所属のタレントさんはほとんど線が細い人が多いのにこの筋肉量惚れるわ。

そしてこのプロジェクトにかける情熱。

気づいたらあっという間に見進め、最後の最後に名前が呼ばれたときは感動して泣いた。

よかった!よかった…!袖の君。

淡々とした毎日を過ごしていた私の心が数百年ぶり動かされたのじゃ。

永遠の命を生きる私に潤いを与えた君に恩返しをしようと決意し、当日中にファンクラブへ入会した。

「永遠」のメンバーの姫の君が「推しは推せるときに推しとこう!」とう言葉に背中を押されたのじゃ。

これからの活躍が本当に楽しみ。

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