昔々あるところに桃から生まれた桃太郎がいました。
鬼退治の道中、桃太郎はおなかをすかせた雉と出会いました。
お腰につけたきびだんご、一つ私に下さいなと、雉は桃太郎にお願いしその代わりに桃太郎の仲間になりました。
鬼を退治し、金銀財宝を手に入れた雉は城下町で事業を興し忙しくも充実した毎日を過ごしたのでした。
あれから5年ーーー
桃太郎一行は最後の一匹を見つけるため、旅に出た。
猿の情報によるとこの城下町で飛脚事業をやっているという話を飲み仲間から聞いていたそうだ。
桃太郎はそれを聞いてどう言いくるめて仲間にして、鬼ヶ島へ襲撃しようか考えていた。
城下町に入ると今まで訪問した里とはうって変わって色々な人、動物であふれかえっていた。
昼からやっている飲み屋を見つけてふらりと猿が消え、綺麗なお姉さんを見つけしっぽを振りながら消えた。
やれやれ、久々の町にうかれやがって。
相変わらず自由な奴らだなと桃太郎は笑った。
桃太郎も早く雉を見つけて鬼にひとあわふかせ、一生遊んで暮らせるお金で城下町の賭博場に毎日行きたいと思っていたからお互い様だ。
「しっかし、ここから探すのは骨だな…」
桃太郎はまずは聞き取りだと思い、歩くと広場に出た。
そこのひときわ大きい掲示板に見たことのある人相書きが書いてあった。
「雉か…?」
桃太郎は近づいて内容を見た。
『雉。元、空飛ぶ飛脚会社の社長。連続窃盗の罪で指名手配中。捕まえたら奉行所まで。賞金25両』
桃太郎はにやりと笑い、説得文句を考えなくても雉はきっとついてくると思った。
そうと決まればまずは情報収集だと、桃太郎は動いた。
桃太郎は金貸しからお金を借り、賭場へ入った。城下町の賭場はひときわ違っていた。
会場がとてつもなく広い。賭場場が何か所もあり、高級そうな徳利を持った見物客が一段高い座敷の掘りごたつに座り賭場を眺めていた。
「よぉ、兄ちゃん。あのお高い御仁方は何をしてんだ?」
「ああ、お武家様たちか。賭場でだれが勝つか賭けてんのよ」
「そうかい、ありがとうな」
桃太郎は俺が狙うならここだなと当たりをつけ、彼らの会話が聞こえる場所で博打を始めた。
武家たちの耳を澄ますと、最初はだれが勝つ負けるといった話で盛況であったが段々と世間話になっていった。
「そういえばお主の奥方が宝物を盗まれたと聞いたぞ」
「そうなんだよ。昨日の晩、女房が米蔵にひと気がして入ってみたらあっさり帯飾りを取られてしまった」
「気の毒だな。犯人は誰なんだ?」
「おそらく今、人相書きが出ている雉だろう。あっという間に取られちまうから捕まえられないんだ」
「雉に気配殺されたら気づくのは難しいよな」
「だから今日は死ぬ気で勝って新しい帯飾りを買ってやらないとな」
ははは。と陽気な笑い声が聞こえてきた。
「米蔵に帯飾りか…」
桃太郎は良い作戦を思いついて二ヤリと不敵な笑みを浮かべた。
桃太郎一行は遊郭付きの酒宿にて作戦会議を行った。
「猿のおっさん、犬、雉の情報は集まったか?」
猿はお酒を手にしてグイと飲み、犬は可愛い雌犬花魁にくっつきしっぽを回していた。
「ちぃ…俺だけかよ。いいか、よく聞け。俺は武家の米蔵の用心棒につく。お前らは雉を発見し次第、取り押さえるんだ」
「米蔵の話は聞いたぞ。襲われてるのは全て米蔵の中らしい」
「あいつは空を飛ぶのが苦手だからな。暗闇に乗じてか…それか、単純に米を食べているだけとか…?」
「その可能性もある。わしらの中で一番食い意地が張っているのが雉だ」
「桃太郎、僕もう向こう行って良いか??」
「ははっ、話は固まったからいいぞ。存分に遊んで来い」
「やったー、さあ行こう。君かわいいねー」
桃太郎は賭場にいた武家に片っ端から用心棒を申し出たが誰からも雇って貰えなかったので、手っ取り早く適当な武家の米蔵に忍びこんだ。
米蔵にはすでに先約がいた。雉だ。
「よぉ、雉。久しぶりだな」
「ひやっ、桃太郎さん。お久しぶりです」
「懐かしむ前にまず逃げるぞ」
米蔵への進入時、すでに何人かの護衛に見つかっていたため、桃太郎は雉を抱いて即座に離脱した。
酒宿に到着したのもつかの間、追ってがすぐそこにきており、桃太郎はお酒を浴びるように飲んでいる猿に声をかけ、雌犬に引っ付いている犬を引きはがし酒宿を後にした。
もちろん、支払いはしていないので酒宿の主人が慌てて桃太郎一行を追いかけた。
桃太郎一行はあっという間に町を出てさらに遠くへ逃げ、夜間の関所を突破したところで山の中にあった空き家に逃げ込んだ。
「桃太郎さん…どうしたんですか急に…」
「鬼ヶ島を襲撃して一獲千金だぁぁ!!」